漂丘誌

君はいつ いごこちを知った?
あのいごこちということばを

あたたかい胸に とびつき
まっさかさまでうとうとも かまわない
抱きしめられ とおいい洞穴をおもうとき

君はいつ いごこちを知った?
あのいごこちということばを

丘に寝転び 丘をのぞみ
顔をかこむ若草は、刃先まで蟻が行き来する
くさいきれのする はるかな陽射しのもと

君はいつ いごこちを知った?
あのいごこちということばを

カーテンは穏やかに 揺れもせず
父と母 とおぼしき二人のひとが 賜物を
固い布団に 滑らかなタオルでつつむとき

君はいつ いごこちを知った?
あのいごこちということばを

スープを運び 犬が見つめ
音にのせて靴の親方が 詩歌を評定していた
あのときの、あのひとが天空からまねくとき

君はいつ いごこちを知った?
あのいごこちということばを

陽が沈み なつかしい挨拶をする
丘の樹々が 息をひそめて黒い整列をする
さようならと あした伐られる声のもと